ちゃんと伝えられたら
それでも少し身体が軽くなったような気がする。

後でちゃんと熱を測ってみよう。

そんな事を考えながら、何とか玄関へたどり着く。

ワンルームなのに、今日は玄関までの距離が長く感じた。

「おい、早く開けろ。」

えっ、この声は…。

玄関ドアを開けると、やっぱり想像した顔が覗く。

「坂口さん、どうしたんですか?」

私はぼんやりとその顔を見る。

「篠田が熱を出したって聞いたから、退社後に寄ったんだ。昨日の今日だからな。」

坂口さんは自分の額を私の額に押し付ける。

「まだ熱は下がりきっていないみたいだな。」

あまりに坂口さんの顔が近くて、私はたじろぐ。

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