蜜月は始まらない
ふと目を覚ました私は、自分の左手の薬指に光る存在に気がついた。

悲しみに暮れて、一度は、手放してしまったもの。
またこうして眺めることができることがうれしくて、ふにゃりと顔が緩んだ。



「……かわいすぎだろ……」



不意に頭上から聞こえたつぶやきに、首を動かしてそちらを見上げる。

私の頭の下に素肌の腕を置いてくれている錫也くんが、悩ましげな顔をしてそこにいた。



「かわ……って、え、私のこと?」

「他に誰がいるんだ。ちなみにまだ、真夜中だけど」



言いながら彼は、私の頭のてっぺんに唇を落とす。

あれから、しばらく眠ってしまっていたようだ。互いに裸のままベッドで寄り添っている今の状況が、無性に恥ずかしい。

しかも実は気持ちが通じ合っていたとわかってからの錫也くんは、甘々の押し売り状態だ。

隠すことなく甘ったるい言葉をささやいてくれて、私はもう、照れくさいを通り越して何度も恥ずか死にするかと思った。

今も顔を赤くしながら、私は身体を縮こまらせる。



「そっか、夜中……あの、この指輪、錫也くんが嵌めてくれたんだよね?」

「ああ。もう、突き返したりしないでくれよ」

「しないよ! 本当に私、気に入ってるんだから」
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