片恋スクランブル



「大丈夫ですかっ?」

八木さんのそばで膝をつき、彼の顔を覗き込む。

赤く腫れた頬を押さえながら、八木さんは御園生さんを茫然と見上げている。

もしかして、これって御園生さんが八木さんを殴ったってことなの?

どうして?

「御園生さん?……どうしてこんな……」

八木さんを殴った理由を聞きたくて、彼を見上げた私は、御園生さんの表情を見て、なにも言えなくなってしまった。

殴られたのは八木さんの方なのに、御園生さんの方が酷く痛そうに見えた。

痛みに顔を顰め、辛そうに私たちを見ていた。

御園生さんの右手の甲も真っ赤になっている。

「…………すまなかった」

長い沈黙のあと、御園生さんが呟くように言って、八木さんの家から出ていってしまった。

咄嗟に御園生さんの後を追おうとして立ち上がり掛けたけど、八木さんの頬の腫れが気になって彼を振り向く。

「俺は大丈夫だから、御園生のこと頼んでいい?」

八木さんの言葉に、頷き私は御園生さんの後を追って八木さんの家から飛び出した。

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