デキる女を脱ぎ捨てさせて
「人を幽霊か何かと思われては堪らないな。」

 肩を竦められて抗議されると、慌てて反論した。

「違うんです。
 それは、集中していたからで……。」

 ある意味、幽霊よりもゾッとする人物ではある。

 遅くなってしまった時間には他に誰も残っていなかった。
 こんなひと気のない社内にこの人と二人っきりになったりしたら、心臓がいくつあっても足りやしない。

 もしかして今、その状況?
 あぁ考えたくもない。

「フッ。
 夏の暑い中、涼を感じてもらえたのなら良かったのかな。」

「……わざと忍び寄ったんですか?」

「人聞きが悪い。」

 悪戯っぽい笑みを浮かべた倉林支社長は付け加えて言った。

「研修期間は残業しても付かないと言っているのに、分からない人だな。
 もう終わるというのなら、この後に食事でも行こうか。」

「……どうしたらそうなるんですか?」

 昨日、こっぴどく断られたばかりですけど?

< 11 / 214 >

この作品をシェア

pagetop