デキる女を脱ぎ捨てさせて
 部屋の中では休憩し始めていた子ども達がお菓子を手にした大人の登場にわぁと色めき立った。

「あ、悪魔。」

 誰かの言葉に胸が痛くなって、また前の二の舞……。ううん。今日はそれ以上に……。そんな不安がよぎった。
 公民館の中にはたくさんの子どもにそれに大人も。

 倉林支社長を吊るし上げるのにはもってこいだろう。

 気が気じゃなくて気を揉んでいると悪魔だと言った子の隣にいた子が口を開いた。

「馬鹿ね。悪魔ならあんなに美味しいお菓子くれないわよ。」

「悪魔だから菓子で気を引くんだろ?」

 私は二人のやり取りをハラハラしながら見守ることしか出来ない。
 ここで私が一人の子を叱ったところで状況が良くなるどころか、悪くなるのは目に見えていた。

 しかも菓子で気を引くというのがあながち間違いじゃないのが………。

「どちらでもいいから食べないかい?」

 にっこりと微笑んだ倉林支社長に悪魔と言った子は押し黙った。

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