デキる女を脱ぎ捨てさせて
「終電がないというのはこの上なくいけないことだね。」

 車で通う通勤のいいところでもあり、悪いところでもある。
 電車ならば終電までに帰らなきゃ!と区切りをつけられるものが、車通勤にはない。

 あと少し、あと少しが出来てしまって、つい遅くまで残業してしまう。
 気付けば時計は日付けをまたいでいた。

「大嶋工場長が褒めるだけあるよ。」

 広い駐車場の中で倉林支社長が車を停めた所まで心許ない街灯の下を並んで歩いた。
 役職順に近いところに停められる駐車場はペーペーの私よりも支社長の方が断然近い。

「また急に褒めるつもりですか?」

 非難する視線を向けると苦笑された。

 深夜まで仕事をしてハイになっている私に怖いものはない。
 深夜だろうと疲れを見せずに相変わらず美しい倉林支社長に食ってかかった。

「今から褒めると思うけどいい?」

「良くないですけど、なんですか?」

 ハハッと笑った彼は平然と言ってのけた。

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