デキる女を脱ぎ捨てさせて
 一斉に点にした目を支社長に向けると呆気に取られたように苦笑した。

「冗談。」

 こんな時にそんな冗談笑えない。
 この人本当、たまに空気が読めない。

 ことにモテて来たからって理由が明白なものばかり。
 その話題の空気は読めなくても仕方ないですねって思えるような。

 恨めしくて倉林支社長から目を背けた。

「課内の者には今の話は内密に。」

「支社長が冗談を言ったことですか?」

 河内さんがそう聞いたことに同意したかった。
 彼のイメージが崩れそうだ。

 しかし彼は別の言葉を口にした。

「西村さんに特定の人がいないこと。
 争奪戦が起こって仕事にならないのが想像できて辟易する。」

 想像だけで辟易できるほどモテないのに。
 面白がっているだけで本気で恋人になりたい人なんていないんだから。

「冗談じゃなく支社長がもらってあげたら。
 お二人、とてもお似合いですよ?」

 何を恐れ多いことを!!!

 驚いて2人と倉林支社長を見比べるように見ると倉林支社長が困ったような顔をさせていた。

 こっちこそ冗談なのに。
 そんな顔をされるともう一度振られたみたいな気持ちになるじゃない。

 八つ当たり気味にそう思った私に想像していなかった答えが返ってきた。

「私は駄目です。
 どうにも結婚願望というものを持ち合わせていないので。」

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