デキる女を脱ぎ捨てさせて
 結婚願望がないと言い切った彼に僅かな胸の痛みを感じた。
 そしてその後には清々しい気持ちが広がった。

 言い切るところが気持ちいいじゃない。
 胸の痛みなんてそれこそ恐れ多い。

 彼に結婚願望があろうがなかろうが私には関係ないことなんだから。

 私は午後から倉林支社長に打ち合わせしたいことがあると会議室に呼ばれた。
 そこには懐かしい顔があった。

「松嶋工場長!
 お久しぶりです。」

 仕事の話をしていたであろう松嶋工場長は倉林支社長と真剣に話していた顔を上げた。
 私を視界に捉えると頬を緩めた。

「あぁ。西村。元気そうで何よりだ。」

 松嶋工場長はにこやかに笑って大きな口から白い歯をのぞかせた。

 倉林支社長が静とするならば、松嶋工場長は動だ。
 体つきはたくましく大らかなで豪快な性格と相まって見た目通りの頼りがいのある上司だった。

 顔立ちはハッキリとした東南アジア系のイケメンで、北欧系のイケメンを思わせる倉林支社長と並ぶとまさしく絵になるとはこのことだった。

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