御曹司は眠り姫に愛を囁く
当主の座と同時に、椎名家の遺産の全てを兄貴に譲ると明記されていたのだ。
その遺産は驚くほど莫大で、油田が採掘されるかもしれない広大な中東の土地も含まれていた。

「兄貴に椎名家の全てを曾爺様が託した意味、分かってるだろ?」

「分かってる。死んだ曾爺ちゃんは俺に何が何でも、総理の椅子に座れと言いたいんだ」

若手議員の中でも、イケメンで若い女性にはダントツの人気を誇り、将来を期待された政治家のホープ。

「意味、分かっているなら、俺に譲るなんて言うなよ」

「・・・俺は政治に集中したいんだ。それには当主の座が邪魔だ」

「邪魔って…言い方悪いぞ」

「・・・お前だって、薄々感じてるだろ?曾爺様の遺産で、椎名家が分裂してるコト」

「それは・・・」

「お前だって椎名家の人間。
それに『シーナ』の次期社長だろ?家具やインテリア業界全体の売り上げが低迷している中、『シーナ』だって例外じゃない。だから、『シーナ』を救う為にもお前が当主になって、遺産を全部手に入れろと言いたいんだ」

「兄貴・・・」

「・・・稜は結婚して、しっかりしてきたけど、お前ほどじゃない。瑛」

「しかし・・・」

「まぁ、俺の一存では決められないけどな・・・瑛。でも、真剣に考えてくれ」

「・・・真剣に考えてみる」


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