御曹司は眠り姫に愛を囁く
彼の怠そうな息遣いが静寂した部屋に響いた。

額を濡らす汗をタオルで拭き、冷えピタを貼り付ける。

熱中症の疑いもある為、念の為にケーキのテイクアウト時につけてくれる小さな保冷剤をいくつも持って来て、彼の首の後ろや脇に入れ、カラダを冷やしてあげた。

一人で寝るには大きなダブルベット。
椎名さんらしいシックな色合いで統一されていた。

私はベット脇に浅く、腰を下ろし、彼の様子を伺う。
彼の左手の薬指には曾爺様の形見のリングが嵌っていた。



「支社長の様子は?」

室雨さんが外出から帰宅し、ベットルームを覗きに来た。

「額に冷えピタしたし、熱中症かもしれないから…首や脇に保冷剤を入れて、カラダを冷やしています」

「色々とお世話を掛けました。貴崎さん」

「いえ」

「今日は、本社の方に赴き、社長と少しやり合ったようで・・・」

「えっ?」

「・・・会社の内部事情も含むので、詳しい話は出来ませんが・・・それが原因で、社長と口論になって・・・」

社長との喧嘩が原因で、ヤケに飲んで泥酔し、今まで蓄積された疲労が出て、具合が悪くなったのか・・・


「後は俺は看病しますから・・・貴方は帰って下さい」

「いえ、朝まで看病させてください」

「で、でも・・・貴崎さんだって、明日仕事が・・・」

「一晩位、寝なくても大丈夫ですよ。室雨さんだって、お疲れでしょ?二人で交代しながら、椎名さんを看ましょ?」


私は今まで、お世話になった感謝を込めて、彼を朝まで看病するコトに。





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