御曹司は眠り姫に愛を囁く
俺は翌日、仕事でトラブルが発生したと、嘘を付き、父には内密で中谷部長と会う。

中谷部長は誰にも話を訊かれたくないのか、『ダイヤモンドホテル横浜』の一室をリザーブした。

「大変申し訳ございません・・・椎名支社長」

「社長に内密の話とは不穏ですね。中谷部長」
中谷部長は本社でもやり手で、父とは同じ大学の後輩の四十七歳。
空調がきいていて、室内は涼しいはずだが、中谷部長は額から玉のような汗を流し、必死ハンカチで拭っていた。表情は焦燥感で満ちていた。
社長に対する後ろめたいキモチの表れかもしれない。

「まぁ、お座りください」

窓際に置かれた椅子にテーブルを挟み、腰を下ろした。

「これを見てください・・・」

中谷部長がテーブルの上に置いたノートパソコンを立ち上げて、俺に過去三年のわが社の決算報告書のデータを見せた。



「これが大手都市銀行に提出された過去三年の決算報告書のコピーです」


俺はパソコンの画面のデータとそのコピーを照らし合わせた。

「んっ?これは・・・」

俺は報告書の数字の改ざんに気づいてしまった・・・



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