御曹司は眠り姫に愛を囁く
「じゃこれ飲んだら、俺の部屋に行こう」

椎名さんは私の肩を抱き、耳許で囁く。

「そ、その前に何か食べてもいいですか?」

「いいよ・・・」

「私、夕食まだなんです・・・」

「俺も飲んでばかりで、余り食べてない…何食べる?」
いつものような普通の会話を交わし、飲みながらサラダやパスタを分け合いながら食べた。


支払いは椎名さんが全て済ませ、柘植社長から頂いたクレジットカードの出番はなかった。

「ご馳走様です」

「礼なんていいよ」

サクッと来たエレベーターに乗り込んで、1階のロビーへと下りていく。

降下する金属の箱の中。

椎名さんは馴れ馴れしく私の手を握り、項の後れ毛に触れる。

「椎名さん・・・ちょっと・・・」


「君は俺に弄ばれたいんだろ?」

「それは・・・」


椎名さんは私達以外乗っていないコトをを好機と思い、背後から抱き竦めて来る。

彼の香りと体温に包まれた背中。

そして、彼は首筋にかかる彼の吐息に
ビクンと肩が震えた。

私達のストーリーは、私のキモチを弄び、最後は捨てると言う残酷な結末。

自分の望んだコトとは言え、胸が切なくて苦しく。







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