御曹司は眠り姫に愛を囁く
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タクシーで私たちはマンションに向かう。
椎名さんは車内でも、私の手を握ったまま離さない。

指と指を絡めた恋人繋ぎに変えていく。

私の鼓動は加速し、全身の血の巡りも活発になり、カラダ中に熱が帯びて特に顔の火照りが酷く、今にも卒倒しそうだった。
手を繋ぐだけで、こんなにもカラダが熱くなる私。
彼に抱かれたら心臓が最後まで持たないかも。

マンションに到着すると、椎名さんはコンシェルジェデスクに居るコンシェルジェを意識し、手を離して、エレベーターホールへと歩いていく。

彼のように器用に心の切り替えが出来ない私は彼の手の温もりを惜しみながら後を付いて行った。


「凛音は素直で純粋な子だ・・・だから、稜に弄ばれたんだ」

「・・・稜さんは今、どうしていますか?」

「稜は本社の営業部の課長として頑張っている。
稜も結婚して、父親になってしっかりした・・・」

エレベーターに乗り込むと、椎名さんは私の腰を両手で抱き、自分の腕の中に引き込むと何も言わずキスしてきた。


舌と舌を絡ませる蜜なキスを落とし、口内を隈なく蹂躙、息継ぎも出来ない激しさに頭がボーッとする。

互いの唾液で濡れ合う唇。

彼も苦しげな吐息を漏らし、甘く煌めく光を宿した瞳で私を見つめた。
その視線が胸を苦しくさせる。

それは偽りの愛の光だからーーー・・・



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