御曹司は眠り姫に愛を囁く
彼の促され、バスルームを借りた。

私の部屋のバスルームと同じで足も伸ばせて、リラックスモードで浸かれる広々とした浴槽。
足許のタイルも壁も全て大理石。

彼の言った通り、ラックには女性用のシャンプーとリンス、ボディソープが置かれていた。
他の女の影を感じさせる嫌な男。

そう思い、嫌いになる為に、自ら望んだコトなのに、後悔で胸の奥が疼いていた。

私は他の女性が置いて行ったボディソープでカラダを綺麗に洗い、シャンプーとリンスで髪も洗った。

******

バスルームから出て、洗面所に置いていたドライヤーを拝借し、髪を乾かす。

奥のベットルームに行こうと廊下を歩いていると手前の部屋のドアの隙間から明かりが漏れ、パソコンのキーを叩く音が聞こえた。

私はドアの隙間から顔を覗かせ、中を見ると椎名さんがデスクの椅子に座って、ノートパソコンを弄っていた。

「椎名さん・・・」

「んっ?出たの?」

「あ、はい・・・」

私はドアを少し開いて中に入った。

「ここは・・・」

「仕事部屋だよ・・・」

彼は指を止めて、パソコンをシャットダウンさせた。
「仕事はもういいんですか?」

「仕事よりも君の相手が先でしょ?」


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