御曹司は眠り姫に愛を囁く
「おーい。貴崎。図面のコピーを頼む」

低いバリトンの声が事務所内に響き渡る。

『ASAMI』の社長・浅見拓也(アサミタクヤ)さん三十一歳。

彼の祖父は亡き日本でも有名な建築家・浅見芳行氏で、父親は同じビルの高層フロアの40階にある大手設計事務所『株式会社・浅見設計』の代表取締役・浅見芳也(アサミヨシヤ)社長。

その浅見社長と父は学生時代の友人。父の口利きで、私は『浅見設計』の中途採用の試験を受けた。

浅見社長との最終面接時に、突然、息子である浅見拓也さんが飛び込んで来た。


「何で、勝手に俺のコンペデザインを変更するんだ?親父」

「あれではコンペに勝てないそう思ったからだ・・・嫌なら、独立して一人でやってみろ」

私の目の前で浅見親子は喧嘩を始める。

二人の間に立たされた私は右往左往してしまった。

「分かった。親父の元でもう働けない!!俺は独立する!!お前、俺の会社に来れば、即採用してやるぞ!!」

「えっ?」
私は浅見さんに腕を掴まれた。

私は『浅見設計』で働く為の採用試験でその場に居たのに、今は浅見さんの元で働いていた・・・


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