御曹司は眠り姫に愛を囁く
「今日のタスクの状況は?」
浅見さんは、副社長の須藤陸翔(スドウリクト)さんに問いかけた。
須藤さんと浅見さんの大学時代の同級生。共に一級建築士の資格を持つ。


浅見さんは斬新な構造で、個性的なデザインの建造物を設計し、「日本のガウディ」とも言われた祖父の血筋を父親以上に受け継いでいた。大学時代から色んな賞を受賞し、建築業界では注目を浴びていた。
彼の設計した有名な建造物は沖縄のコンベンションセンター。

『ASAMI』は住宅や店舗の設計や建築に軸においていた。

最初から、浅見さんは会社と言う組織には馴染めない性格だった。

建築家としてだけではなく、人の上に立ち、リーダーシップを発揮して、グイグイと私達従業員を引っ張っていく敏腕社長としての顔も持っていた。

顔立ちも父親似の精悍な顔立ち。スラリと背が高くて、男の色気が堪らない。
でも、あれだけのワンマンな行動派。

魅力的な男性ではあるけど、恋人にすれば苦労するタイプかもしれない。


でも、彼は既婚者。奥様は七歳年上の女性で、名前は千晶(チアキ)さん。独身時代は、大手メガバンク『帝和銀行』のテラーとして勤務していた。
歳よりも若く見え、妖艶な美人。
事務所の経理担当を務め、月末になるとオフィスに姿を見せる。二人の間には三歳で可愛い盛りの女の子が一人居た。
年下や同年代の女性では、彼には合わなかったと思う。彼は千晶さんと言う最良のパートナーを奥様に迎えていた。



< 28 / 171 >

この作品をシェア

pagetop