御曹司は眠り姫に愛を囁く
私がヘアアイロンで必死に寝癖を直していると、エントランスのインターホンが鳴った。

「今、出ます!!」

と私は慌てて壁のモニターを見た。


「えっ!?」

モニターに映る人物を見て、驚愕した。

須藤さんではなく、椎名支社長の姿が映っていた。

モニター越しに「二日酔いで、気分の悪い陸翔に代わって、俺が迎え来たんだ。貴崎さん」と支社長は丁寧に説明してくれた。

「わかりました、今すぐに開けます・・・」

私はエントランスドアを開けた。


私の部屋の訪問に来たのは、両親ぐらいなもんで、男性を招き入れたのは支社長が初めて。

「お邪魔します」


「おはようございます」

「おはよう・・・貴崎さん」

「まだ・・・支度の途中で・・・」

「早く着いた俺が悪いんだ・・・」

支社長が切れ長の瞳を見開き、私の部屋に驚いていた。
私の薄給では、絶対に借りられない家賃の高級マンション。


「父が『浅見設計』の浅見社長と知り合いで、浅見社長の計らいで住んでいます」


「貴崎さんのお父さんって、浅見社長と知り合いなのか?
じゃ君のお父さんも建築関係?」

「はい・・・『近江建設』に勤めています」
「へぇー」

支社長は納得した表情を浮かべた。


「普通では、住めませんよ…こんな部屋。あ…コーヒー飲みますか?」

「うん」





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