御曹司は眠り姫に愛を囁く
新居 瑛side~
俺は年2回、フランス・パリで行われるインテリア・家具・生活雑貨の海外ビジネスの向けの展示会の『シーナ』の担当者として、3週間パリに滞在。

予め、決まっていたスケジュール。

展示会を終えて帰国し、盆休み辺りに引っ越ししようと考えていた。

しかし、陸翔のせいで俺の中の予定が狂ってしまい、日本に残した秘書の室雨にすべてを任せた。

「ここが、支社長の新しい住まいです。『浅見設計』のデザイナーズマンションです」

成田で室雨と落ち合い、彼の運転でここまで連れて来られた。

俺は茫然とする。

「支社長希望の目黒川沿いで、春先には桜が満開で、キレイに見えるそうです・・・」

あれは俺の独り言だと言いたかったが。

「いい部屋がみつかって、良かったですね。支社長」

自分が住む新居なのに、室雨に任せた俺も悪い。
今更、他の部屋を探してくれとも言えない。契約を済ませ、引っ越しも完了した今とはなってはそこに住むしかない。

「ちなみに部屋は何階だ?」

「・・・17階の角部屋です。隣にはキレイな若い女性が住んでますよ。名前は確か・・・貴崎凛音さん」

「彼女に会ったのか?」

「はい…引っ越しの当日に・・・」

室雨は契約した駐車スペースに車を停めた。

「彼女は俺のコトを知ってるのか??」

「はい・・・ちゃんと挨拶してくださいね・・・」

どんな顔して、彼女に挨拶したらいいんだ?

室雨は先に下りて、トランクから俺の荷物を下ろした。

「ありがと」

「これが、新居のカードキーです」



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