御曹司は眠り姫に愛を囁く
隣人となった椎名さん。

彼と会うのは久しぶりで、私とは生活ベースが色々と違っていて、顔を合わせる機会も少ない。

彼の部屋には一度も入ったコトないが、きっと広々とした部屋に似合う高級な家具やインテリア、調度品に囲まれ、ラグジュアリーな空間が広がっている。

私の部屋のように、空間を無駄にしていない素敵な部屋だ。



二人でエレベーターに乗り込んで、彼は地下1階の駐車場、私は1階のエントランスホールのボタンを押した。

「あの・・・椎名さん…友達から訊いたんですけど・・・椎名さんって・・・」

「何?」

椎名さんはセットから乱れ、額に落ちて来た前髪を左手で掻き上げた。

彼の薬指のマリッジリングが妙に輝き、私を黙らせた。

「何か俺に言いたいコトあったんじゃないの?」

「いえ」

彼のマリッジリングは女除けの為に嵌められた物がどうかなんて、私には関係ないコトだ。

「デート楽しんできてね・・・」

1階へとエレベーターが到着、彼が開くのボタンを長押し。
私が出るまで待ってくれた。

「ありがとうございます・・・」

「じゃあ」

彼の乗せたエレベーターは地下駐車場に下りていった。


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