遠距離の彼 と 近距離の同期
「今日は、天の顔が近いな、と思って。」

私が言うと、

「ああ。」

と頷いて、天も笑った。

「毎日、それ履くか?」

「無理! こんなの、天の腕がなきゃ、いつ
転ぶか分かんないもん。」

そう、私は初め、こんな高いハイヒールは無理だと言った。

だけど、バージンロードは、父の腕に掴まり、ゆっくり歩くし、そのあとは、ずっと天の腕に掴まっていればいいと言われて、この靴を履いている。

「新郎様、新婦様、そろそろご準備ください。」

係の人に声を掛けられて、私たちはチャペルへ向かう。

「結、また後でな。」

そう言って、天はチャペルの中へ。

私は父が待つチャペルの外へ。

しばらくすると、パイプオルガンの荘厳な音色が聞こえてきた。
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