政略結婚!?箱入り令嬢は俺様社長に愛でられています

 教材を抱えて選択授業の教室から出ると、廊下には男子生徒たちの解放されたような晴れやかな顔があふれていた。

「よお飛鳥井、おまえエミリちゃんと別れたってホント?」

 自分の教室に入ったとたん、からかうような声に行く手を阻まれた。廊下側の一番前の席で机に脚を投げだしていた二條雅臣が、通り抜けようとする迅の手からテキストを奪い取る。

 元素記号や実験解説が英語で書かれているそれを見て「げえ」と舌を出すと、雅臣は興味を失ったように隣の席、つまりは迅の机へとテキストを放り投げた。

「もったいねえ。聖斉女子のマドンナじゃん。なんで振ったんだよ」

「……面倒だったんだよ」

「うわ、なにそれ、ヒドイ男!」

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