おはようからおやすみを笑顔で。
私にしては怒りを露わにしたつもりだったけれど、彼は全く気にしていない様子で、

「ん? 俺、嘘なんか吐いてないじゃん」

と返してくる。


「きっとバリバリ出世していくであろう斉野さんにとっては、子どもはいらないんだろうなぁっていう、俺の想像を話しただけじゃん。嘘じゃないでしょ?」

「そ、それは……」


……確かに、そうかも?

言われてみればその通り、彼の口からは一言も〝斉野さんがこう言っていた〟という類のワードは出ていない。
斉野くんが白井さんのことを『あいつの言うことは信用するな』って言っていたから、白井さんに騙されたような気になっていたけれど、実際は私が騙されたと思い込んでいただけ?


……ということは、彼が私を狙っている、という話も斉野くんの勘違い?
そうか、そうだったのか! 確かに、私なんてそんなモテる人間じゃないし、全てが勘違いだとしたら妙に納得する!


「そうだったんですね! 誤解していてすみません! 心配してくださってありがとうございました!」


そう言って頭を下げると……少しの間の後、白井さんがブッと吹き出した。


「ははははっ! ヤベー、面白すぎる! 沙耶さんって、めちゃくちゃ騙されやすい性格してるでしょ⁉︎」

「な、何故それを知ってるんですか⁉︎」

「何故もなにも、今まさに騙されてるじゃん」

「え?」

私が首を傾げると、白井さんは一層笑う。


「俺はぁ、本当に沙耶さんと斉野さんの仲を壊すために、ああ言ったんだよ?」
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