おはようからおやすみを笑顔で。


午前中は散々落ち込んだけれど、その後、神様はまだ私のことを見捨てた訳じゃないのだと思えた。


「ありがとうございます!」


業務終了後、会社の近くの交番に立ち寄ったところ、私の免許証がちゃんと届いていたのだ!

涙目で喜ぶ私を見て、交番勤務のお巡りさんが「お姉さん、良かったね。焦ったでしょ」と声を掛けてくれる。

本当に良かった。私が落とした後で誰かが拾って、すぐに届けてくれたんだろうなぁ。


「あの、届けてくださった方のお名前とかご住所とかわかりますか? お礼をしたいのですが」

免許証を胸元でギュッと抱き締め、感動に打ちひしがれながら目の前にいる三十代後半くらいの男性のお巡りさんにそう尋ねると、


「ああ、お礼はいいんだよ。それ拾ったの、警察の者だから」


と返される。



「警察の者? もしかして、あなたが拾ってくださったんですか?」

「いや、私じゃないよー。私なんかよりもっと若くてねぇ、警視庁に勤めるキャリア組のエリートが預かってきたんだよ」

「エリート?」

「おまけに顔もイケメンでねぇ、バンバン出世していくんだろうなぁ、ああいうのは」

「へぇ……?」

若くして出世街道まっしぐらで、おまけに顔もカッコ良いだなんて、世の中にはそんな人もいるんだなぁ。
姉も、私がそういう人を彼氏として紹介すれば安心してくれるかもしれないけれど、さすがに私とエリート男性とでは釣り合わなすぎる。
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