おはようからおやすみを笑顔で。
……って。早く帰って、明日の昼に姉に会わせる彼氏役をどうするか考えなくちゃいけない!


「直接お礼が出来ないのは残念ですが、その方に是非よろしくお伝えください」

免許証を今度こそ財布の中にしまいながらそう告げると、お巡りさんは私の背後に視線を向けながら「あ、噂をしていれば」と口にする。


え? と反応しながら振り向くとーー



「……えっ⁉︎」

「よう」


そこにいたのは昨日のチンピラ……じゃなかった、警察の人。
今日も昨日同様に目付きが悪い。私のことを睨んでいるようにも見える。で、でも睨まれるような悪いことはしていないはず。

この人が、何でここに? いや、ここは交番だし警察の人が現れてもおかしくはないかもしれないけど……でも警視庁勤務の人だって聞いたし……。


「お姉さん、この人だよ。あなたの免許証を拾ったのは」

「え゛っ!」

しまった。思わず声が裏返ってしまった。いや、だってまさかこのおっかなそうな人に拾われていたなんて。
あ、昨日猛ダッシュで逃げた時に落としたのかな?
まあ、この人だって見た目は怖そうだけれど警察官なんだもんね。しかもエリートらしいし、何も怖がることはないよね。


……けど落ち着かない! そもそもここは交番! 警察官の巣! 盗難に遭っていることがバレる前に退散しなければ!


「あ、あの、拾ってくださって本当にありがとうございました。ではーー」

「待て」

「ひえっ」

さり気なく横を通り過ぎようとしたら腕を掴まれてしまった。
しかも、やっぱり鋭い視線で睨んでくる。こ、怖い! 私が何をしたって言うんだ!
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