おはようからおやすみを笑顔で。
「あ、あのぅ……何でしょう……?」

鋭い視線に思わずびくびくしながら質問すると彼は、


「ちょっと付き合え」


と言いながら、私の腕を引っ張ったまま交番の外へ出ていく。


「ちょっ、ちょっと⁉︎」


もちろん抵抗しようとはするけれど、それよりも早く、彼は交番の外に停めていたらしい車の助手席に私を押し込んだ。


突然の謎の状況に混乱しているうちに、彼も運転席へと乗り込み、シートベルトを締める。


「おい、お前も早くシートベルト着けろ」

「はっ、はい。って、そうじゃない! これは一体どういうーーわっ」

私の質問なんて聞く気もないかのように、車は動き出してしまった。これじゃあもう逃げられない。とりあえず、シートベルトだけは締めておこう。


一体、私に何をする気?
訳がわからなくて頭が痛い。
だけど、相手は警察官だ。誘拐とか強姦とか、そういう目的ではないだろうから、そこだけは救いだ。


車は国道を真っ直ぐ走り続けているけれど、男性は何も話さない。

五分程経ったところで、私の方から口を開いた。


「あの、せめてどこへ向かっているのかくらいかは教えてもらえませんか?」

恐る恐るそう尋ねると、


「ドライブしてるだけだから目的地は特にないけど」


というまさかの答えが返ってくる。


「ちょ、それどういうことですか! 用がないなら降ろしてくださいよ! あ、いや、ここで降ろされてもちょっと困っちゃいますけど!」

「用がないっていうか、お前とちょっと話したかったんだよ。そろそろ免許証取りに来る頃かと思って立ち寄ったんだが、ちょうど会えて良かった」

「は、はぁ?」
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