おはようからおやすみを笑顔で。
淹れたてのコーヒーを彼に手渡すと、私はソファーではなく、ソファーの前に置いてあるガラステーブルの横に座った。


「なんでそんなとこ座ってんだよ。ここ空いてるぞ」

そう言いながら、彼はぽんぽんと自分の隣を叩くけれど、そんな所に座ったら身体と身体が密着してしまう。


「いいの、私はここで。それより、冷めないうちにコーヒーどうぞ」

そう言って、私は自分のコーヒーに口をつける。

だけど斉野くんは、マグカップをじっと見つめたまま、飲もうとしない。


「斉野くん?」

ま、まさかインスタントコーヒーではお気に召さなかっただろうか……! と心配に思っていると、彼がぽつりと、


「……俺、猫舌だから」


と答える。

初めて見る、恥ずかしそうなその表情がなんともかわいいと思ってしまい、ついプッと吹き出してしまう。


「なんだよ、笑うなよ」

「ごめんごめん。なんかおかしくてさ」


そういえば私、今の斉野くんのことまだほとんど知らない。
仕事のことも詳しくは聞いてないし、猫舌なことも今知った。


「ねぇ。斉野くんってどうして警察官になったの?」

「え?」

「斉野くんのこと、知らないことばかりだなって思ってさ。あ、でも頭が良いことは知ってるよ。成績いつもトップだったもんね。高校も確か、都内で偏差値上位の西高に進学したんだよね? 先生たちが、斉野は凄いって噂してたの覚えてる」

「へぇ」

「凄いよねぇ、西高だなんて! もしかして、斉野くんって東大出てたりする? なーんて、さすがにそこまで……」

「あー、よくわかったな」


ぶはっ! と、驚きのあまり、口に含んでいたコーヒーを少々吐き出した。
< 49 / 129 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop