おはようからおやすみを笑顔で。
そんな私を見て、斉野くんが「ふっ」と小さく笑う。
バ、バカにされたー! と思ってショックを受けながら顔を上げると、


「本当、お前と一緒にいると楽しいよ」


そう言って、斉野くんはとても楽しそうに笑っていた。

さっき見た、優しい笑みとはまた違う。子供みたいな、無邪気な笑顔。

こんな風に笑うんだと思ったら、先ほど抱きしめられた時よりも心臓が暴れ出した。



その時、斉野くんの携帯に電話がかかってくる。
それは職場からだったらしく、急な呼び出しが入ったからすぐに出勤しなければならないとのことだった。
警察官という職業は、休日も気が気ではなさそうで大変だなぁ……と思うけれど、彼は玄関を出ていく寸前、首だけ私に振り向き、とても意地の悪そうな顔をして、


「まだ駄目、ってことは、いずれは期待していいってことだな」

と言って、クスッと笑う。


そのまま彼は外に出ていき、一方私はその場にしゃがみ込んで頭を抱える。


確かに私、咄嗟とは言え〝まだ〟だなんてとんでもないことを言ってしまった。


このまま彼と一緒にいたら、心臓がおかしくなってしまう気がする。

それなのに、もっと彼のことが知りたいし、話したいし、一緒にいたい。


私……


間違いなく、斉野くんのこと好きになりかけてる。
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