おはようからおやすみを笑顔で。
彼の唇が、熱い。唇を通して、彼の熱が全て伝わってくるような気持ちになる。
何度も何度も角度を変えてキスを繰り返してくるから、頭がボーッとして、なにも考えられなくなりそう。

すると、私の身体から思わず力が抜けてしまった隙に、彼の舌が私の唇を強引に割りながら口内に入ってきた。


「ん、ん……っ」

逃げても追い掛けられ、舌を絡め取られる。
恥ずかしくてどうしたらいいかわからないけれど……嫌ではない。

彼に求められて、嬉しい。私は多分、そう感じている。

そして同時にーー私も彼を求めていることに気付く。

凛花ちゃんにも、誰にも、斉野くんを渡したくないと、自分だけのあなたでいてほしい、なんて。
自分がこんなに独占欲が強いなんて知らなかった。

……ううん、きっと相手が斉野くんだからーー彼限定で、私はこんな気持ちになるんだろうな。


彼は、そのまま私の身体をトサッと押し倒す。
視界には彼の顔だけが映る。


「いい?」

たった一言、そう尋ねられる。
その意味がわからないほど子供ではないけれど、


「だ、駄目」

と、目の前にある彼の胸板を押す。
でも私の力じゃびくともしなくて、顔と顔が至近距離のまま、彼は私を見つめる。
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