おはようからおやすみを笑顔で。
「だ、大丈夫だよ。予定通り、明後日のお昼に駅前のレストランで。うん、うん。じゃあまた……」


本当のことを言えずに、電話を切ってしまった……。
他人から騙されやすい分際で、人を騙してしまった。しかもたった一人の肉親を。物凄い罪悪感だ。でも今は、この後どうするかを考えなくてはいけない。


①詐欺に遭ったことをやっぱり正直に話す
②男友達に彼氏のフリを頼む


パッと思い付く選択肢はこのくらいだろうか。

①の選択肢は、姉に対して申し訳ないけれど考えてはいない。
罪悪感はあるけれどそれ以上に、姉に悲しい思いをさせたくない。
姉には私のことなんて心配することなく、イギリスで夫婦仲良く楽しく暮らしていてもらいたいのだ。

となると、私が選ぶべきなのは②の選択肢?
……いや、頼める相手がいるのならば②を選ぶけれど、あいにく私にはこんなことをお願い出来るような異性の友人はいない。


そうなると、隠れ選択肢の③を発動させる必要がある。

選択肢③とは……


「ナンパ……」


小さくそう呟いてから、ゴクリと唾を飲み込む。


頼める相手がいないのなら、自分で作るしかない。
けれど、今から彼氏を作るのなら、その方法はナンパしかないように思える。


私の外見は、恐らくそこまで不細工ではないと思うのだけれど、少なくとも美人ではない。誰の印象にも残らない冴えない顔立ちである自覚はある。
体型も、昔から食べても太りにくいので痩せ型ではあるけれど、スリムとかモデル体型という訳ではなく、ガリガリで色気がない。おまけに胸も小さい。


そんな私に……ナンパなど成功させられるのだろうか。今までナンパしたことは、もちろんない。

けれど、やらなければいけない! 姉を悲しませない為に、人生初のナンパをやるしかない!
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