戦乱恋譚
相変わらずの敬語は、二つ年上の私を気遣って、というわけではなく、あくまでも“客人”としてもてなしているつもりらしい。
その時、ふと、伊織が前掛けをしていることに気がつく。
「もしかして…このご飯、伊織が作ってくれたの?」
「あ、はい。お口に合うといいのですが。」
ご飯に大根の味噌汁、鮭に菜の花のおひたしにひじきの煮物。一汁三菜が完璧に揃った朝食に、衝撃を受けた。…容姿端麗で由緒ある家の若き当主で、おまけに料理も出来るなんて…ハイスペック男子か、あんたは!なんて小さく心の中で突っ込む。二十三歳とは思えない。
一人暮らしのアパートでは、作り置きのおかずや夕飯の残り物をかきこむことが多く、朝食をとらずに家を出ることもしばしばあった。まともな朝食なんて、久しぶりだ。
「いただきます。」
箸をとって煮物を口に運んだ途端、私は目を見開いた。
「美味しい……」
伊織は「それは良かった。」と微笑んだ。そんな彼を心の底から尊敬する。屋敷に居候させてもらって、世話されるがままに布団でゴロゴロしていた自分が恥ずかしい。
私は、“この人、私よりも主婦力があるんじゃあ…”、なんて視線を送りながら伊織に尋ねた。
「ご飯は、いつも伊織が?」
「いえ。いつもは使用人に作ってもらうんですが、たまに気分転換も兼ねて、こっそり。」