神様には成れない。


京ちゃんの手の動きを観察していれば、ふと視界の中に近くに置いてあった雑誌が入る。

それはどうやらメイクの雑誌らしく、一つの文字が大きく目に付いた。


「魔法……」

「え?……ああ、これ?」


思わず呟いてしまった単語がすぐに思い当たったのか、傍にある雑誌を手にして表紙を見せてくれる。


「いつも買ってる雑誌なんだけど、気になるなら貸すよ?」

「ううん。そう言う訳じゃないし、読んでも私お化粧上手く出来ないから」


好意からの申し出に対して曖昧に笑って見せる。

変化が欲しくてこういう雑誌の物を真似してみた事もあるのだが、いつも何かが違うと思ってしまって、不変的な私を続けてしまった経験が何度もあるのだ。


「……京ちゃんはどんどん変わっていくから本当に凄いよね」

「どうしたの?急に」


変わりたいと言った日から京ちゃんは目に見えて分かる程綺麗になっていっているのだ。口にしなかっただけで尊敬している。

昔からの下を向いた発言は変わらずとも、前を向いている事の方が多くなった。それは単純に凄い事だ。


「何か悩んでるって言うなら、私には解決は出来ないだろうけど聞くだけなら聞けるけど……」

「う~~ん、そう言う訳じゃないんだけどね」


悩みと言われれば悩みなのだろうけれど、相談するほどの事かと言えばそうでもない。ウジウジと丸まっているだけにすぎないのだから。

京ちゃんは訝しげな表情を浮かべながらも、それ以上に言及する事はなかった。




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