神様には成れない。


それでも、ポツリと零す。


「……私、詐欺になるほどのメイクをする事でやっと正面向いて歩けるから、それを魔法だって思うし、だからこそメイクが好きになったんだけど、この本はそうじゃなくて。たった一つを変えるだけで魔法だって言っちゃうような簡単な魔法なの」

「変える?」

「例えばリップの色味を少しだけ変えてみるような目に見える変化とか、スキンケアをいつもより良いものに変える、自分にだけ分かる変化とか。誰に気づかれなくたって、変えたらちょっとドキドキするしワクワクするじゃない?」

「それは、ちょっと分かるかも」

「でしょ?そうしたら外に出たくなって……って言う自分の心を明るくする自分の為の魔法なんだって」


パラパラとページを捲って、徐に雑誌を閉じる。

面白い話だと思いながら聞いて、ならば私にも出来るのだろうかと考えてみたりもする。


「これ読んでると、ちょっとだけ高校の事を思い出したりしたのよね。私の場合それは千花のおかげで勇気にも変わったなって」

「私?」


特に何かをした覚えもなく首を傾げる。

すると彼女は苦笑いを浮かべて見せた。


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