神様には成れない。


「きっと、俺は瀬戸さんとなら毎日楽しい」

「っ、じゃ、じゃあ今は……」

「うん?」


だからこそ、ずっと曖昧で良いわけではなかった。

感覚を理解出来なくても、認識を理解する事は出来る筈だ。

すっかり引き込まれてしまった彼のペースでも、聞いておくことくらいは私だって出来る。

痛い位に鼓動する心臓を押さえつけて、意を決する。


「いっ、今は淵くんにとって、てっ、手を繋ぐ事に意味がある、って思っても……いい、かなぁ……?」

「――……」


詰まりがちに声を出して、彼の顔を見る事もままならないけれど、返答に不安になって目線だけで彼を盗み見る。

すると、彼は意味ありげに口元に弧を描いた。


「正直に言えばやっぱり何か思う程の事はないけど、意味は瀬戸さんが持たせてよ」

「とは……?」

「誰のものでもない俺が好き。なら、瀬戸さんのものにもなれないのかなあ。とか」

「そ、それは……っ!」


先程の私の言葉の揚げ足取りだ。

誰にも奪われたくない一心の言葉で、回りくどい意味などもなかった。

きっと彼だって察している筈なのだ。


「っ~~淵くん案外意地悪だね……!?」



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