神様には成れない。


「俺ねぇ」


と、間延びしたいつもの口調で不意に切り出される


「瀬戸さんの予想できない所好きだよ」

「へ?!」

唐突の好意を示す言葉。


「俺だって瀬戸さんの何処までも優しい所が好きだよ」


今まで言われた“好き”とはまた違う。言われる度に体の奥から熱が引きずり出される。


「手繋ぐのさえ慣れてなさそうなのに付き合ってくれる瀬戸さんが好き」

「う……っ、」

「自分を持ってて強い瀬戸さんが好き」


これではまるで先の私への仕返しのように見える。

それでも、彼にとって口にされる事と口にする事は全くの別物なのだろう、穏やかに楽しそうに微笑みを浮かべながら述べていく。

その言葉がどれ程私に降り積もるかも知らないで。


「そっ、そんな楽しそうに言われても……!!」


聞きたいけれど恥ずかしいから聞きたくないと反発した感情が沸き起こる。

どうすればいいか分からないままに、抗議してやり場のない恥ずかしさに指先が宙を掻く。

その手を彼は両の手の平で包み込んだ。


「うん、楽しいよ。変だって言われるんだろうけど、好きだって言うのも瀬戸さんにだったら楽しい」

「な、何それ……!」


今の私には到底理解しがたい事ではあるのだが、自分以外の感覚を理解できる方が変な話だ。

だからこそ、曖昧な関係になっていたのだ。



< 162 / 488 >

この作品をシェア

pagetop