神様には成れない。


反射的と言うのか、口をついてでるように絡まった言葉。

絡まった言葉を解くように彼は口元を一度手で抑えてから、一つ間を置く。


「……それは、やだなぁ」


困ったように笑って私を見つめる。

酷い事を言った彼自身が酷い行いを拒否する。


「う……っ」


私の質問を肯定をされればきっと悲しい気持ちになる筈なのに、“嫌だ”と言われたら言われたで嬉しいような、恥ずかしいような何とも言い難いような気持ちになって、俯いてしまう。

そんな些細な変化が嬉しいだなんて、心がキュウっと締め付けられてしまう。


「えーー、聞いたの瀬戸さんなのに何で照れてんの?」

「だ、だっ、だって……っ!」


指摘されて更に顔が熱くなる。


「だって……なーに?」


楽しんでいるような声色で、何か企んでいるような表情で彼は言葉の続きを促す。

当然、私にそんな事を気にしている余裕もなくて促されるままに口を開く。


「何か、そんな……っ好かれてるみたいな……!」


自分が恥ずかしくなるような言葉を自分自身で発しているだなんて気づく事も出来ない。

彼は唇を噛み、笑いを堪えているような仕草を見せる。


「う~~ん??好かれてないと思ってたの?」

「そっ、そう言う訳じゃないけど、あっ、違っ!自惚れとかじゃなくて……!」


独りで混乱をして、普段の自分を見失う。

どんな風に話して、どんな風に彼に向き合っていたのか分からなくなり、逃げたい気持ちから後退りをしてしまう。

それを引き止めるのは彼だった。


「っ……!」


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