神様には成れない。
決まった行き先には電車に乗って行く事となるのだが、何となくゆっくりとした歩幅で歩き始める。
彼とは夕方のバイトで一緒になるので、必然的に夜暗くなってから隣を歩くことが多い。
まだ陽の高い内からこうしているのは新鮮だ。
と、また夜と昼間を無意識に比べてしまう。
ちらりと隣を見上げて盗み見れば、下からの角度でも整った顔立ちなのが分かる。
そうやって見ながら、視界を少しずらせば道行く人が何人か彼を見ているような動作が見て取れた。
やはり、それなりに身長も高くて遠目からでもすらっとした体型なのが一目瞭然なので見てしまうものなのだろうか。
加えてこのルックスなのだから、目が行くのも頷ける。
「瀬戸さん?キョロキョロしてると転ぶよ?何処か行きたいとこでもあったの?」
「へ!?あ、ううん!えっと、えと、あ!映画何やってるんだろうなーって通りがけで気になっただけ!」
まさか淵君の顔を見ていました。とは言える筈もない。
慌てて誤魔化すように、最寄りの映画館の広告ポスターを指差す。
「瀬戸さん映画好きな人?」
「えっ、いやー……どうかな」
好きの意味合いは多くある為に、曖昧な返事をしてしまう。
このジャンルが好きだと言うものがあるわけでもない。かと言って雑多に見るわけでもない。
映画館にだって数えるほどしか行った事がなく、家でレンタルしたものを観る方が遥かに多い。
故に映画館に行く程映画が好きとも言えず、語れる程の知識もない。ああ、でも一つだけはっきりしてる事がある。
「ひっ、っ!!」
それはジャンルで言うところのホラーが苦手という事だ。