神様には成れない。


何だかんだで、彼の部屋の前に到達できたのだが彼が居ないのでは同じではないか。と、再びインターホンを押してから考え込む。

いや、しかし、此処まで導いたのは他でもない彼なのだ。


「……」


私は今の今まで使うことが無かったカードキーを取り出した。

無機質なそれを指先でなぞって、ドアに翳す。

解錠音を確認してから、そっとドアノブに手を掛けた。

目に飛び込むのは薄暗い室内。肌に感じるのは篭った夏の熱気。まだ、真夏の昼間なのにこれだけ暗いのはカーテンを閉め切っているからだろうか。

玄関先に揃えられている靴は数足。どれもが彼のもの。しかし、よく履いていたグレーのスニーカーだけが見当たらない。

入った感じだと、人の気配を感じられない為、やはり出かけているのか。


「こんにちは。……淵くん?」


返ってこないとは思いながらも部屋の中に声を掛ける。

これも思った通り、ただただ私の声が響くばかりだった。

とりあえず、電気を付けようかとスイッチに手を伸ばす。


「わっ?!」


何気なく振り上げた手は下駄箱の上に置かれた何かに当たって、バサバサと音を立てて落ちて来た。

それは足元に微かな風を起こす。

落ちたものは何なのか。薄暗くてよく見えない為、極力踏まないよう、足を動かさないように先に電気を付けた。


「……これ」


部屋が明るくなって、すぐに確認したそれは、何枚かの写真だった。


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