神様には成れない。
「っ、」
同じように笑っているのに今度はギュウッと心臓が掴まれたように痛んだ。
偶々だったのか、そうしていたのかは定かではないけれど、裏向けにされた写真が余計にそうさせた。
彼は今一人でどう感じているのか。などと、一人にさせた私が言えもしないのにそんな事を思ってしまう。
「淵、くん……!」
もう一度名を呼んで靴を脱ぎ散らかすように部屋に踏み込んだ。
彼はこんな部屋になんて居ないのに。
リビングにも、彼の自室にも何処にも居た感じがない。
いつもとは違い、微かに花のような匂いが残っているだけで、数日家にいないのではないかと推測できる。
最後にシャルロットが居た部屋に踏み込むけれど、彼女すらいないのだ。
それが家に暫く帰らない意思を無言で伝える。
何故何も言ってくれないのだ。いいや、最後に会った時にはもう言えるような雰囲気ではなかっただろう。
しかし、部屋に通しておきながら私に推測させるなどと酷い行いではないだろうか。
さっと、血の気が引くように体が冷たくなる。
考えるよりも先に、私はスマホを取り出していた。
京ちゃんがモバイルバッテリーを貸してくれたままにしてくれたお陰で、電話するには充分だった。
『はい、千花さん?』
彼に近しい人なんて、聞ける子なんてもうこの子しかいなかった。
「月乃ちゃん」