モテ男子が恋愛したくない私に本気をだした結果。
「莉世が俺のためを思って離れようとしてるのは十分に分かった。今日一日を過ごしてみて、これでもかっていうくらい、十分に分かった」
「でも俺は、それよりも、それよりもずっと……莉世が隣にいないことの方が、よっぽどつらい」
「っ……」
「莉世が俺の言葉に、照れたり、ツンとしたり。時には笑ってくれたり。そんな莉世の傍にいないことの方が、声が聞けないことの方が、俺は苦しいよ」
そして、そっと体を離されて、まっすぐな目が私を捉える。
「前にも言った通り、もう後悔したくないんだよ。莉世が泣いている時、苦しい時、つらい時に隣にいられないことが。傍にいられないことが。俺は何があっても、莉世の過去がどんな過酷なものであったとしても、莉世のことを好きなのは変わらないし、ずっと隣にいる。離れることなんか絶対にない」
「あお……」
「頼むから……俺の隣で笑っててよ」
その声は、どこか掠れて震えていた。
「っ……」
もう、無理だ……
やっぱり、無理……
一度決めたことだったけれど、どうしても忘れることなんかできない。
諦めることなんかできない。
こんな愛しい人を、大好きな人を手放すなんて。
悲しげに、切なげに揺れるその目に心が揺さぶられて。
もう、離れないよ。
私も蒼井のことが好きだから。
ずっと蒼井の隣にいる。
そう、伝えようとしたのに。
「あお……」
ザ──────。
その気持ちを、その思いを、全て消し去るかのように、私の声を遮った雨の音。
その瞬間。
ドクンっ!!!!
心臓が、息が詰まるほどの大きな音を立てた。