モテ男子が恋愛したくない私に本気をだした結果。
夕日が差す廊下を、手をつないだまま歩く。
「…………」
委員会に行く前とは明らかに様子が違う私に、蒼井も何か気づいてるはず。
今も始終無言だし……
蒼井は気を使ってくれているのか、何も言ってこない。
優しい、な……
いつもグイグイくる蒼井のことだから、絶対気になってるはずなのに、何も聞いてこないだなんて。
「蒼、井……」
「ん?」
聞き返してきたその声は、とっても優しくて。
「ごめんね……
気、使わせて」
私らしくない。
いつもの強気で突き放すような言い方をする私とは大違い。
弱々しくて、声も小さい。
こんなとこ、蒼井に見られたくなかった……
「気にすんなって。
俺のこと、頼ってくれてるんだろ?
それだけで俺は十分だから」
「うん………」
つないでいた手をそっと離して、ポンポンと優しい眼差しで、頭をなでてくれた蒼井。
いつもなら振り払っているはずなのに、今日はそれができない。
寧ろ、その手が心にじんわりとあたたかさを灯していくようで。
なんだか安心、する……。
「もう、大丈夫。
教室戻って、さっさと終わらせよう」
「おっ、莉世復活?
じゃあ、次は恋人つなぎしていい?」
「はあ?調子に乗らないで」
差し出された手を無視するように、歩き出した私と、ほっとしたように、またいつもの冗談をニヤリと笑って言ってくる蒼井。
「早く教室行くよ」
「じゃあ、恋人つなぎはまたお預けってことで」
大丈夫、だと思っていた。
もう、平気だと。
その時、までは。
「り……、霧雨さん」
─────中学の時から忘れられないその声が、後ろから聞こえてくるまでは。