Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~
雨宮の車を見送った後、千紗子は公園の中に足を向けた。
初冬の朝はよく冷える。歩くのは少しの間だからと手袋をしなかったので、指先が冷たくなってきた。両手を口の前に持ってきて「はぁ」と息を掛けながら、公園の並木道の間をゆっくりと進む。
落葉した木々の枝の隙間から、千紗子は空を見上げた。
(どうしてこんなことになっちゃったの……)
考えようとしなくても考えてしまうのは、やっぱり裕也のこと。
彼のことを思うと、胸が締め付けられて苦しくなる。
自分のことを裏切った彼のことを恨む気持ちもある。けれど千紗子の感情のほとんどは悲しみだった。
(私にもっと可愛げが有れば良かったのに…。そしたら裕也はあんなことしなかったのかも…)
思ったことを口に出すことも、上手に甘えることも苦手で、可愛く振る舞うことの出来ない自分に愛想が尽きたのかもしれない、そう考えると、自分自身が否定されたようで千紗子の胸が更にきつく締め付けられた。
足元を見ながらとぼとぼと歩いていると、公園の端に図書館が見えてきた。
(気持ち、切り替えないと。)
大きく息を吸って吐く、自分を鼓舞する為に、千紗子は冷たくなった掌で頬を軽くパチンと叩いた。
その時、千紗子の肩を誰かの手がポンッと軽く叩いた。
振り向くと、美香が立っていた。