Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~
 「千紗子はベッドで寝ること。俺なら大丈夫だ。」

 駄々をこねる子どもを叱るみたいに、強めに言い聞かせられて、千紗子は口を噤んだ。
 雨宮の瞳は揺らがず、仕事の時みたいに迷いはない。

 (なんだか私の方が無茶を言ってるみたいになってる…)

 両脇に垂らした手をグッと握った。

 千紗子よりずっと責任のある仕事を担っている雨宮は、本当は疲れているはずだ。
 今日は特に開館前から閉館までの十時間、職場に居たことになる。

 (私のことばっかり心配して、雨宮さんは自分のことはなおざりにしてる。)

 「私、帰ります。」

 「え?」

 「今から自分のマンションに帰ります。」

 言うなり、踵を返した千紗子の腕を、雨宮は反射的に掴んだ。

 「待て。どうした?もう夜中だ。何かあったらどうする。」

 「タクシーで帰りますから。」

 腕は掴まれているけれど、雨宮の方を振り返らずに千紗子は言った。
 
 千紗子の声が、いつになく硬い。
 これまで聞いたことのないその声色に、千紗子がいつもと違うことに雨宮は気付いた。
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