Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~

 確かに千紗子は小さい頃から弟と妹の面倒を見てきた。

 千紗子が六歳の時に末の妹は生まれた。父は仕事で忙しく、母は生まれたばかりの妹の世話で手いっぱいで、千紗子と弟はよく近所の祖母の家に預けられていた。その為、千紗子は五歳の弟の面倒を見ながら、必要な時には妹の世話もした。
 子ども心にも父母と祖母を助けたいと思ったからだ。
 
 生まれたばかりの妹は可愛い。けれど自分一人では何もできない赤子は、良く泣き手間が掛かることを、千紗子は六歳にして知ったのだ。

 母親の関心を一身に受ける妹とやんちゃな弟。
 手のかかる弟妹達と一緒に過ごすうちに、千紗子は自分の言いたいことを我慢したり後回しにしたりするのに慣れていったのだ。

 「千紗子?」
 
 言いかけた途中で黙り込んでしまった千紗子を雨宮が呼ぶ。

 「あ、ごめんなさい。えっと、弟や妹の面倒は多少見ましたが、しっかり者にはなれませんでした。」

 「そうか?俺は千紗子はしっかりしてると思うけど。」

 「…そんなことはありません。」

 自分の主張を強く出すことの苦手な千紗子はどちらかというと大人しい方で、昔から気の合う友人はそんな彼女のことを引っ張って行ってくれるタイプだ多い。唯一付き合ったことのある裕也も、そういうタイプだった。
 誰かに合わせるのは苦にならないけれど、だからといって誰かに頼らないと何もできない気がして、千紗子はそんな自分が情けない気にもなる。

 「雨宮さんは妹さんとは仲がいいんですか?」
 
 この話題を終わらせたくて、千紗子は雨宮に尋ねた。
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