Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~

 「俺には妹が一人いる。」

 「え?」
 
 何の脈略もない雨宮の台詞に、千紗子の口から反射的に言葉が出た。

 「妹は俺の二つ下だ。千紗子に兄弟はいるのか?」

 「は、はい…」

 「上?下?」

 「下に弟と妹が一人ずつです。」

 問われるままに返事をする。

 雨宮がいきなり家族の話をし始めたことに、千紗子は驚いていた。
 職場では彼とプライベートな話なんてしたこともなく、彼のことでいつも騒いでいる先輩達からも、雨宮の家族構成の噂は聞いたことすらなかった。聞いたところでやんわりとはぐらかされる、とか。
 プライベートが謎に包まれているところも、彼が噂の的にする要因の一つのようだ。

 (いきなり兄弟の話なんて、雨宮さんどうしたのかしら…)

 後ろから抱きしめられているから、千紗子には雨宮の顔は見えない。

 「年は近いのか?」

 「すぐ下の弟とは一つ差で、妹とは六つ離れてます。」

 「なるほど、千紗子がしっかりしているのは、昔から下の兄弟の世話をしてきたからなんだな。」
 
 「そんなことは…」

 『ない』と言おうとした言葉を飲みこんで、千紗子は自分の子どもの頃を思い出した。

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