Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~
「でも今は、千紗子の作った美味しい料理を食べるのが最優先だな。」
軽やかな口調が、千紗子を縛る見えない糸を断ち切った。
何事も無かったかのように、雨宮が中央の大皿からクロワッサンを一つ取る。
「ここの下に入ってるブランジェリーのパン、千紗子も気に入ってくれたのか?」
「は、はい…。」
たどたどしく返事をすると、雨宮が持っているクロワッサンをちぎりながら口に入れる。
「ここのクロワッサンは本当にうまいな。千紗子のシチューともすごく合う!千紗子も食べてみたらいい。」
「はい。」
進められて大皿からクロワッサンを手に取る。
朝のうちに買っておいたので焼き立てではないけれど、時間が経った今もサクッとした歯ごたえの後、バターの香りが鼻に抜ける。
「美味しいです。」
「だろ?沢山買っておいてくれたんだな、ありがとう。ここのクロワッサンはすぐに売り切れるから、昼前にはなくなってしまんだ。」
「そうなんですね。良かった、雨宮さんの好きなものを買えて。」
数ある種類のパンの中から、雨宮が気に入っているものを買えたことに安堵した千紗子は、ほっとして肩の力が抜けた。
そんな千紗子の様子を見た雨宮が、そっと息をついたことに、千紗子はまったく気付かなかった。