Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~
驚いた千紗子が顔を上げると、冴え冴えとした瞳と視線がぶつかる。
瞬間、千紗子の背筋がゾクッと震えた。
その瞳に普段の優しさは感じられず、冷淡で鋭い。そして、逃げることなど許されないほどの迫力があった。
千紗子の背中に、冷たい汗が流れる。
(仕事の時でもこんな雨宮さん、見たことない……。私、なにかとんでもないことを言ってしまったの!?)
心の中では色々な言葉が湧いて出てくるのに、どれも口からは出ることはない。
ぐるぐると回る思考と、目の前の鋭い視線に、千紗子はとうとう口をキュッと引き結んでしまった。
口から出せない言葉の代わりなのか、千紗子の瞳にじんわりと涙の雫が集まってくる。
じわじわと瞼に集まる熱を感じながら、千紗子は自分のふがいなさを感じていた。
(あんなに穏やかな雨宮さんを、こんなふうに怒らせてしまうなんて、やっぱり私が口下手なのがいけないんだわ…。今だって、もっとちゃんとした言葉を選べてたら……)
負の感情が千紗子の心を灰色に覆っていく。
婚約者に浮気されたのも、優しい上司を怒らせてしまうのも、自分が悪いのだ。
千紗子の瞳から涙が一滴、ポロリとこぼれ落ちた。