Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~

 次々と落ちる雫が、地面に跳ねかえって千紗子の靴を濡らしていく。

 駅の明かりを少し離れた場所から眺める。
 人々の足音と傘に落ちる雨音。時々高架の上を電車が通って行く音も耳に入ってくる。

 本降りの雨の中、傘を差さずに立ち止まっている千紗子の姿を、時折すれ違う人がチラリと振り返る。
 こんな姿で雨宮に会ったとして、いったい自分は何を伝えたかったのか。

 (帰ろう……)

 肩を落とし、駅の光に背を向けた千紗子の背中に、それは突然投げかけられた。

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