Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~
 「それはそうと、送って頂いてありがとうございます。」

 「余計なお世話だったか?彼が迎えに来てくれた?」

 「いいえ、助かりました。彼は多分今日も遅くまで仕事だと思うので。」

 「忙しいんだな、木ノ下の彼は。」

 裕也に今日の忘年会のことを話した時に、彼も今日は接待残業だと言っていたから、きっとまだ帰って来ていない。

 (急に帰ったらびっくりするかな、裕也)

 そんなことを考えていると、自然と頬がゆるんでくる。

 「幸せそうだな。」

 雨宮にそう言われて、恥ずかしくなって頬を手で押さえた。

 結婚が決まってからまだあまり日が経っていないせいか、裕也のことを考えるといつだって千紗子の頬は緩んでしまうのだ。

 「一人でにやにやしてすみません。」
 
 赤い顔を笑って誤魔化す。

 「いや、幸せそうで何よりだ。彼とは長いのか?」

 「はい、付き合って3年になります。私、彼からプロポーズされて、結婚することにしたんです。」
 
 千紗子のその言葉に、一瞬目を見開いた雨宮は、すぐに「そうか。」と言った。

 裕也からのプロポーズの後、お互い何かと忙しい時期だったせいで、お互いの両親への挨拶などはまだ済ませていない。
 『正式な婚約』はそれを済ませてからなので、職場への報告はその後にする予定にしていた。
  その為、美香以外に結婚のことを話すのは、雨宮が初めてだった。

 「おめでとう。」

 雨宮は、千紗子の顔を見てそう言った後、すぐに前を向いた。

 美香以外に初めて結婚を打ち明けた興奮から、千紗子は雨宮の横顔が切なげに歪められたことに、少しも気付かなかった。
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