Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~
「千紗ちゃん、何かいいことでもあった?」
千紗子の口角が自然と上がるのを目聡く見つけた美香は、横から覗き込むように首をかしげる。丸くなった瞳は猫のようだ。
「え、いえ…土曜日の作家さんとの遣り取りを思い出して、嬉しくなっただけなんです。」
はにかみながらそう言うと、美香はうんうんと頷いた。
「すごく素敵な方だったわよね。お話も面白くて聞きやすかったし、とっても気さくでこちらからも話しかけやすかったわね。」
「はい。」
「そして更にイケメンで、言うことなしだったわ!」
最後のところだけ異様にテンションの高くなった美香に、千紗子は苦笑を漏らす。
その絵本作家はプロフィールによると四十二らしいが、一見三十代半ばにしか見えないくらい若々しく、俳優かと思うほど容姿が整っていた。そしてふんわりとした彼の作品とは真逆の、ワイルドな風貌に溢れるような大人の色気を備えた男性だったのだ。
女性館員を筆頭に、子どもを連れて読み聞かせに訪れたお母さまたちの目が皆同様にキラキラしていたのを思い出すと、千紗子は可笑しくなってクスリと笑った。