Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~

 千紗子の目の前で閉じられている瞳は、眼鏡があってもよく分かるほど睫毛が長い。
 色白のきめ細やかな肌、筋の通った高い鼻、形の良い唇。そしてそれらはすべてがバランス良く並んでいた。

 間近に見るその整いすぎた容姿に、付き合い始めた今もまだ、慣れないでいる。

 脈打つ鼓動に飲みこまれてしまわないように、千紗子は胸の前で握るこぶしに力を込めた。


 (私も、一彰さんに誓いたい。)

 両手をほどくと、恐る恐る一彰の両肩にその手を乗せる。
 つま先を上げ伸びあがり、顔をゆっくりと近付ける。吐息が掛かるほどの距離まで近づいた時、千紗子はその口を開いた。

 「ずっとあなたの側で笑っています…大好き、一彰さん。」

 そんな言葉が聞けると思っていなかった一彰は、閉じていた瞳を思わず開いた。と同時に千紗子の唇が一彰のものに重なる。
 
 頬を紅潮させた千紗子が、瞳を閉じて自分に口づけている。

 一彰の心に、言いようもない幸福感が押し寄せてきた。

 (いつだって、俺はこの唇に癒されているな……)

 温かくなる胸と熱くなる感情を、抑えることなど到底出来るはずもなく、一彰は千紗子をきつく抱きしめると、今度は自分から彼女の唇を奪うように口づけた。
 


     (了)

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